宇宙開発新時代における広報普及事業部の近況

はじめに

今、世界中が新型コロナウィルスとの戦いを強いられており、日本でも緊急事態宣言が発令される中、命の危険はもちろんのこと、生活の先行きにも不安が募る状況です。 少しでも早く、平常時の世の中に戻っていけるよう節に願うとともに、組織としてできること、また社会の一員としてできること、やるべきことを考えながら、一歩一歩進んでいきたいと思います。

広報普及事業の近況

「いもけんぴ」コーナーのはじまりに際し、広報普及業務を生業とする私が所属する部署の近況などを、今年の宇宙開発のエポックに絡めながら紹介させていただきます。

まずは日本の宇宙開発ですが、今年の2月、日本初の人工衛星となった「おおすみ」の打ち上げから50年という節目が訪れました。

日本宇宙フォーラムでは、以前より、NASAとロシア科学アカデミーから月の石や砂をお借りして、1960年代にアメリカと旧ソ連とが繰り広げた人類の月面到達競争にスポットをあてたオリジナル企画展「アポロ展」を展開しています。「おおすみ」の打ち上げに成功し、日本の宇宙開発が本格的にスタートした半世紀前、アメリカは既に人を月に送り、無事地球に戻すミッションを成し遂げていた訳ですが、その現実には今でも圧倒されるとともに、故ケネディー大統領が1961年代に構想を打ち立ててから10年もかからぬうちに、人を月に送り込むべく一丸となって突き進んだ当時のアメリカのスピリッツに感動を覚えて止みません。

私たちはこの感動を、今後もより多くの方に伝えていきたいと思いますが、一方、年末の12月には小惑星リュウグウでのチャレンジングな探査を終えた「はやぶさ2」が、6年間にわたるミッションを経て、いよいよ地球に戻り、日本の宇宙探査に新たな歴史が刻まれる予定です。これらの最新の話題や、今後の宇宙探査や有人宇宙活動の動向なども絡めながら、「アポロ展」を発展・継続していきたいと思います。

宇宙開発を支えるロケットの分野では、現用のH-IIAロケットの後継機となるH3ロケットの開発が最終段階を迎え、こちらは年度くくりになりますが、2020年度中に試験機1号機が打ち上げられる予定です。

実際の打ち上げを見られるのはもう少し先になりますが、日本宇宙フォーラムでは、毎年「THE JAPANESE ROCKETS」と題したロケットフォトカレンダーを制作しています。ロケットの製造から輸送、そして打ち上げに至る様々な表情を写し出す迫力満点のカレンダーです。2020年版には、H3ロケットのメインエンジンとなるLE-9エンジンの生々しいカットや、昨年日本の民間企業が開発・製造したロケットとして初めて宇宙空間に到達した「MOMO3号」の打ち上げシーンも盛り込みました。ロケットフォトカレンダーの販売は3月末をもって終了しましたが、来年以降も継続して販売していく予定ですので、ご興味のある方は年末になりましたら、ぜひ本ウェブサイトにてご確認いただければと思います。

海外での注目は、何といっても米国の新たな宇宙船の話題に尽きると思います。皆さんも良くご存じのとおり、2011年にスペースシャトルが引退して以降、アメリカには独自の有人宇宙船が無くなってしまい、地上と国際宇宙ステーション間の宇宙飛行士の移動は、ロシアのソユーズ宇宙船に頼らざるを得ない状況でしたが、米国の2つの民間企業がそれぞれ開発した宇宙船の運用が、ようやく今年から始まります。そして今月5月、スペースX社の有人宇宙船クルードラゴンが、米国の2人の宇宙飛行士を載せて、NASAケネディ宇宙センターから打ち上げられる予定です。将来の月や火星探査に向けた大きな節目となる見込みです。

日本でも、月探査や小型衛星の開発などで、民間企業の活躍が進んでいます。宇宙開発の更なる活性化と利用拡大に向け、国や地方自治体が推進する新たな宇宙ビジネスの芽出しや創造に繋がる取り組みを支援し、民間の企業や団体が主体となって宇宙事業を展開する本格的な時代の到来に向け、微力ながら貢献していきたいと思います。

若松 宏昌

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