アメリカとロシアの船外活動用宇宙服

画像:NASA

日本宇宙フォーラムでは、様々な宇宙服のレプリカを貸し出しています。民間の宇宙旅行などが始まり人々の関心が集まっているせいか、ここのところ、船外活動用宇宙服のお問い合わせをいただく機会が増えてきました。そこで、現在、国際宇宙ステーション(ISS)で使われているアメリカとロシアの宇宙服についてご紹介したいと思います。

船外活動に不可欠な宇宙服
土井隆雄宇宙飛行士が1997年11月にSTS-87ミッションで船外活動を実施して以来、多くの日本人宇宙飛行士が船外活動を実施しています。船外活動用の宇宙服は最大8時間にも及ぶ船外活動中の宇宙飛行士を宇宙環境から保護し、宇宙飛行士の生命を維持するための装置で小さな宇宙船にも例えられます。

あわせて、大西宇宙飛行士が船外活動や宇宙服について説明している動画をご紹介します。

船外活動用宇宙服
船外活動用宇宙服には、アメリカが開発した(1)船外活動ユニット(Extravehicular Mobility Unit: EMU)とロシアが開発した(2)Orlan宇宙服があります。

EMU(右)とOrlan宇宙服(左) ©NASA

 

EMUとOrlanのスペック(出典:JAXAウェブサイト)

宇宙服名称 EMU Orlan
重量 約120kg 約110kg
運用圧力 0.3気圧(純酸素) 0.3気圧(純酸素
主要構成品 ヘルメット、上部胴体(腕含む)、下部胴体、グローブ 1ピース
寿命 30年(適切な保守により) 4年又は12回の船外活動
サイズ M, L, XLの3サイズに加え、手足の長さを調整することで対応 腕及び足の長さを紐で引っ張ることにより対応

(1)船外活動ユニット(EMU)
アメリカが開発したEMUはスペースシャトル用に開発されたもので、1980年代から利用されています。その後、細かな改良が加えられ、現在もISSで利用されています。宇宙服アセンブリ(Space Suite Assembly: SSA)と生命維持システム(Life Support System: LSS)のふたつの部分から構成されています。SSAは、上部胴体、下部胴体、ヘルメット、グローブ、冷却下着などから構成されています。また、内部の気密を確保し、熱環境、宇宙デブリなどから宇宙飛行士を保護するために、SSAは冷却下着を含めて14層もの生地から構成されています。SSAの背中部分に取り付けられるLSSは、宇宙服の内部気圧と温湿度をコントロールし、呼吸用の酸素や電力を供給するほか通信機能を提供します。

EMU

EMUを着用した様子(左)とEMUの説明図(右) ©NASA

EMUの着用方法・・・EMUはパーツが分かれており順番に着用していきます。船外活動は二人で行うことが基本となっていますが、着用の際も二人でサポートしあいます。

ISS内で宇宙服着用中

ISS内で宇宙服着用中 ©NASA

(2)Orlan宇宙服
ロシアが開発したOrlan宇宙服(Orlanはロシア語で海鷲)は、旧ソ連のサリュート宇宙ステーション時代(1971~86年)から使用が開始され、その後、ミール宇宙ステーション時代(1986~2001年)、国際宇宙ステーション(ISS)時代(2001年~)と改良が重ねられて現在に至っています。
宇宙服アセンブリと生命維持システムによる構成は、米国のEMUと同様ですが、Orlan宇宙服は宇宙服アセンブリと生命維持システムが一体化されていることが特徴となっています。また、内部気圧が約0.4気圧とEMUに比べて高めのため、船外活動クルーが宇宙服を着用後、体内から窒素を追い出すために要するプリブリーズと呼ばれる待機時間が約30分と短くなっています。また、EMUは地上に回収後、整備・再使用することを前提に開発され、寿命も30年と長く設定されていますが、Orlan宇宙服は一定の期間・回数を使用した後は廃棄することを前提に開発されており、EMUに比べて寿命は短く設定されています。

orlan

Orlan宇宙服を着用した様子(左)とOrlan宇宙服の説明図 ©NASA

Orlan宇宙服の着用方法・・・背面にある開口部を開いて、宇宙服アセンブリ内に入ります。

orlan_wearing

Orlan宇宙服を着用する宇宙飛行士 ©NASA

同じ宇宙服でも、作る国によって違いが出るようですね。
日本宇宙フォーラムでは、船外活動服(EMU)、Orlan宇宙服それぞれのレプリカを貸し出していますので、ふたつの宇宙服を同時に展示して見比べてみませんか?宇宙服レプリカの貸し出しについては、宇宙服レンタルをご覧ください。

成田 知人

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